コラム集
- ●つむじ風 3月17日
- 県の人事異動が14日付で内示になるなど、3月末にかけて異動の時期に入ってくる。異動に伴う引っ越しも繁忙期で、国交省では引っ越し時期の分散に協力を呼び掛けている▼近年、人手不足などで希望日にあう引っ越し事業者が見つからない事態となっているとされる。今シーズンは「物流業界の2024年問題」も相まって、事態の深刻化が懸念される。分散化の実現には課題が山積しているだろうが、少しでも取り組みが進むことが期待される▼短い期間に物事が集中することで、さまざまな障壁が生じる。近年の天候を見ても、水不足になるほど雨が降らなかったかと思えば、過去に経験したことがない程の豪雨となり、災害に見舞われている。今冬も、日本海側を中心に災害級の大雪になった▼1月下旬から2月にかけて、国や県などから多くの工事案件が公告された。債務負担行為の設定などにより年度末の発注が増えた側面もあるもので、閑散期とされる年度当初からの工事着手を可能とするものだが、月ごとにムラのない発注件数となることが、真に求められる。
- ●つむじ風 3月14日
- 大船渡市の林野火災は9日に大船渡市が鎮圧を宣言し、10日には市の全地区で避難指示解除が解除された。本紙12日付1面では県建設業協会大船渡支部の須賀芳也支部長が、地域住民の暮らしの再建に向けた思いを語っている▼故宮城政章氏から、83年の久慈大火に対応した際の話を聞かせてもらったことがある。消防車のバックアップに生コン車で水を運んだこと、海に逃げ込んだ人を会社の船が救助したこと…。最後の一言はしっかり覚えている。「もらったのは表彰状1枚だけ。でも地域住民の命を救うことができた経験こそが、何にも代えられない財産になった」▼県建設業協会の向井田岳会長は以前、本紙の取材に対して、大規模災害に向き合う地域建設業の姿を以下のように表現した。「目の前の風景に呆然としながらも、その場でなすべきことを黙々と遂行する、そのこと自体が建設業の力だ」▼災害時などに地域建設業を動かすものは目の前の損得勘定だけではない。しかしそれにも限界がある。ちなみにここで言う「限界」とは、お金だけではないですよ。
- ●つむじ風 3月13日
- 東日本大震災から14年が過ぎ、もうすぐ新年度の春を迎える。東北や県民の一人として、3月11日を決して忘れることなく、三陸沿岸地域や岩手に目を向けていきたい▼震災後、建設行政や建設業界が総力を結集し、各地の復旧・復興事業に当たってきた。地域の安全な暮らしを一刻も早く確保するため、数々の建設現場が目の前で動き出していったことを今も思い出す。当時、工事現場の安全パトロールの際に、参加者に対し津波避難経路が事前に伝えられるなど、同時並行での取り組みも数多くあった▼行政、民間を問わず、4月には新しい職員や社員が入り、新入社員教育や各種研修の場などが設けられることだろう。もしかしたら、復旧・復興の現場で活躍した人たちの背中を見て、入庁・入職する若者もいるかもしれない▼震災後の課題をどのように克服したのかなども含め、復旧・復興で発揮した技術やノウハウなどを、若い世代に伝える取り組みも大切にしたい。ひいては、それが岩手の教訓の伝承、地域防災力の強化につながっていくと思っている。
- ●つむじ風 3月12日
- 凌風丸と啓風丸。気象庁に所属する海洋気象観測船で、海洋の表面から深層に至るまでの水温、塩分、溶存酸素量、海潮流などの海洋観測のほか、海水中や大気中の二酸化炭素濃度の観測などを行っている▼両船の観測データを解析した結果、日本南方海域と親潮域の海水中に溶けている酸素の量(溶存酸素量)が、世界と同程度かそれ以上の速さで長期的に減少(貧酸素化)していることが分かった。貧酸素化は、地球温暖化の進行による長期的な海水温の上昇に伴い発生すると考えられているという▼数値で見ると、海面から深度1000㍍までの溶存酸素量は、日本南方海域で10年当たり0・5~0・6%低下、親潮域では10年当たり2・5%低下している。溶存酸素量の減少は、地球温暖化の進行による長期的な海水温の上昇に伴い発生すると考えられている▼詳細は、気象庁ホームページの海洋の健康診断表で公開中だが、臨時診断として「24年の日本近海の年平均海面水温が過去最高を更新」とのトピックスも掲載されている。自分事として捉えなければならない。
- ●つむじ風 3月11日
- 東日本大震災の発災からきょうで14年を迎えた。弊社にも当時、小学生だった新人が昨年入社。今回の震災特集を担うまでになっており、改めて年月の経過を感じる▼以前、釜石市で取材した「ぼうさいこくたい2021」では、地元高校生が「私たちは震災の経験を伝えられる最後の世代」とし、「自分の経験や防災教育で学んだ知識を後世に伝えていきます」と力強く誓っていた。震災を経験していない世代が増えている中でも、伝え方を工夫しつつ地域の防災文化の醸成を図っていく必要がある▼宮古市は旧田老総合事務所の跡地に市災害資料伝承館を整備しており、6月の開館を予定している。規模は鉄骨造平屋建ての床面積462・04平方㍍。施設では津波、台風などの災害の歴史をテーマに、教訓を伝える資料が展示される計画となっている▼山本正德宮古市長は「伝承館で歴史を学んでもらい『災害は必ず起きる』という意識を共有したい」と語っていた。震災の記憶の風化が懸念されている今、防災教育をさらに充実させ次の災害に備えていきたい。
- ●つむじ風 3月8日
- 東日本大震災の発災から14年を目前に、おのおのさまざまな思いを巡らせているに違いない。自然災害の脅威に毎年のように苛まれ、地震や津波、豪雨の恐ろしさを感じずにはいられないが、特にも今年に入ってからは、山林火災の怖さについても改めて思い知らされている▼1月には、アメリカのロサンゼルス近郊で大規模な山火事が発生した。本県でも、気仙地区や宮古で山林火災が相次ぎ、特にも先月26日に出火した大船渡市での山林火災は、規模の大きな被害となっている。被災者が一日も早く元の生活を取り戻すことが願われる▼相次ぐ山林火災に、1961年に発生した三陸フェーン大火などを思い起こした読者もいたのではないか。同大火では、本県下14カ所から発火し、推定焼失面積は約2万6000㌶に及ぶともされる▼各種災害の発災から月日を重ねるにつれ、記憶の伝承の重要性は増していく。経験は「あの災害でも大丈夫だったから今回も大丈夫」と考えてしまう危険性もはらむが、先人からの教えや取り組みを大切にして、有事に備えたい。
- ●つむじ風 3月7日
- 岩手労働局は、県内建設業一斉監督指導の実施結果を公表した。監督を行った135現場のうち、何らかの労働安全衛生法違反が認められた現場の数は69現場。違反率は51・1%だった。直近5年間では20年の48・8%に次ぐ低い数字であり、3年連続で違反率が低下している▼違反の内容を見ると、最も多かったのは「墜落防止措置」で違反率は71・0%。違反内容の中でも突出しており、過去5年間の20~30%台と比較しても、24年は飛び抜けて多いと言わざるを得ない▼24年の建設業における労働災害(速報値)を見ると、「墜落・転落」によるものが56人と最多で、全体の30・1%を占める。例年「墜落・転落」による労働災害の割合は3割強で、岩手労働局の第14次労働災害防止計画では、墜落・転落災害の防止に関するリスクアセスメントへの取り組みをアウトプット指標に設定している▼近年は高所での対策が進んだ反動か、脚立や重機など比較的低い場所からの墜落・転落が増えているとのこと。労災防止に特効薬はない。まずは基本的な対策の徹底から。
- ●つむじ風 3月6日
- 県建設業協会(向井田岳会長)は、東日本大震災の教訓を踏まえ、3月11日を「防災の日」と定めている。毎年、11日の前後に広域的な災害を想定した情報伝達訓練を実施しており、今年度の訓練は10日に行われる予定だ▼今回も、一部の内容を事前には公開しないブラインド方式を取り入れ、訓練に臨むこととしている。昨年度の訓練で初めて導入した方式で、参加者からは「緊張感を持って訓練できた」との声が聞かれた▼前回の訓練では、実際に機器が繋がらないという事態に見舞われたが、情報共有の手段を切り替えるなど、協会本部・支部とも臨機応変に対応していたことを思い出す。訓練後の意見交換においては、「支部会館が市のハザードマップで、高さ3~5㍍の浸水想定区域に含まれている」などの課題も挙げられていた▼今年度の訓練でも、新たな課題や貴重な情報を発見できるかもしれない。「防災の日」の訓練は、県土の強靱化につながる取り組み。それぞれの地域の守り手が持っている「地元を見つめる目」を共有し、教訓をつないでいきたい。
- ●つむじ風 3月5日
- 昨年6月から9月に国土交通省と各都道府県は、小中学生を対象に土砂災害やその防止について理解と関心を深めてもらおうと絵画・作文を募集。入賞作品が決まった▼全国から絵画の部の小学生が1205点、中学生が1415点、作文の部の小学生が376点、中学生が661点の合計3657点の作品が寄せられた。審査会で選考し、国土交通大臣賞4点、国土交通事務次官賞60点が決まり、盛岡市内の中学生の作品が事務次官賞に選ばれた▼表題は「土砂災害を防ぐために」。その中で、県内で伝えられている「命てんでんこ」を挙げ、判断の大事さを強調。土砂災害の種類も紹介し、「それぞれの土砂災害に逃げ方があるので、その時の判断が大事」とし、さらに災害時の本物と嘘の情報を見分けて判断することの大事さも訴えている▼自宅や現場であれば、ある程度の判断を下すことができるだろう。いつどこで何が起きるか分からない時代。土砂災害の前兆現象を確認しつつも、いつもと違う何かを感じる五感を養いながら、一人ひとりの防災意識を高めたい。
- ●つむじ風 3月4日
- 2月26日に大船渡市の赤崎町字合足で発生した山林火災。焼失面積は3日午前6時時点で約2100㌶まで拡大し、延焼が続いている。現場では、全国から派遣された緊急消防援助隊の応援を受け消火活動が展開されており、今は早期の鎮火を願うばかりだ▼「合足でまた山火事が発生した」との一報を同市隣の住田町で聞いたのは26日の午後2時。沿岸部は強い風が吹いていたため「燃え広がらなければよいが」と危ぐしていたが、まさかここまでの事態になるとは。山林火災の恐ろしさ、消火の難しさを思い知らされる▼本県沿岸地域では、山沿いの急傾斜地に建てられている住居を目にすることも多い。加えて、震災復興の防災集団移転促進事業では、高台山間部を切り開くなどして住宅団地を整備していることから、周囲が山林に囲まれている場所も増えており、山火事には十分な注意が必要になっている▼県山火事防止対策推進協議会は5月末までの期間で、「山火事警戒宣言」を発令している。空気が乾燥し風も強い時期だけに、防火管理の徹底を心掛けたい。
- ●つむじ風 3月3日
- 「制度化されたころは、どこかに行く時のルート上にあることから立ち寄る場所だったが、今ではその場所へ行く目的化が定着した」と道の駅について話すのは、佐藤善仁一関市長。道の駅「だいとう」の登録証交付の際に述べた▼道の駅は、1月31日の第62回登録で全国1230駅となり、同日に9駅登録。県内では、一関市大東町の「だいとう」のほか、盛岡市の「もりおか渋民」と山田町の「ふなこし」の3駅が登録され39駅となった▼道の駅では、第3ステージに位置付け、「地方創生・観光を加速する拠点」と「ネットワーク化で活力ある地域デザインにも貢献」に向けた取り組みも進む。その一環で、都道府県の地域防災計画等で、広域的な防災拠点に位置付けられている道の駅を防災道の駅に選定している▼道の駅「だいとう」は、奥州市と陸前高田市を結ぶ国道343号の中間点に位置することなどから、防災道の駅への登録も目指している。防災道の駅に、県内では遠野市の「遠野風の丘」が選定されており、道の駅に期待される役割は大きくなっている。
- ●つむじ風 2月28日
- 本紙8面に、月2回ペースで「いわて防災学教室」を掲載している。岩手大学地域防災研究センターに所属する教員を中心に、地震、火山、砂防、地質、水工学、防災教育など幅広いテーマで執筆いただいている。連載開始は15年7月。一度お休みをはさんで18年6月に再スタートし、今月26日付で再開から100回を迎えた▼この連載が目指すのは、地域の守り手である建設産業界が災害に強い地域づくりへの意識を高め、防災に対する知見を深めること。連載を再開した18年は県の復興計画期間の最終年に当たり、同時に台風10号災害からの復旧工事が本格化した年。加えて南海トラフ地震や北海道沖の超巨大地震などのリスクが話題になっていた時期でもあった。幸いにも行政やコンサル関係者からご好評いただいている。ありがとうございます▼すっかり手前みその宣伝みたいになってしまったが、読者の皆さんが改めて防災への関心を高めるきっかけになれば幸いです。まもなく東日本大震災の発生から14年。本紙を捨てずに読み直してくれるとうれしいです。
- ●つむじ風 2月27日
- 埼玉県内で発生した道路陥没事故と、水道管の破裂・漏水による被害。連日、テレビや新聞、SNSなど、さまざまな媒体で話題に挙げられている。多くの皆さんにとって、生活に直結するインフラの重要性を見直す一つのきっかけとなっているのだろう▼本県においても、インフラの機能の維持は重要な課題だ。例えば公共土木施設と一言でいっても、道路や河川、ダム、砂防、上下水道、港湾など、多岐にわたる。農林水産分野のインフラにも目を向けると、農道や林道、漁港施設などがある。どれも県民の暮らし、なりわいを支える岩手の財産だ▼建設業は、県民の生活や地場産業などを下支えする基幹産業。施設の管理主体の行政と建設業界が一体となって、広大な県土のインフラを守っている▼施設の老朽化を踏まえ、身の回りのインフラに関する一般市民からの注目度も一段と高まりそうだ。建設業は、ものづくり産業と言われる。インフラの整備などを通じて、地域に貢献する「人づくり」に汗を流していることも、多くの人に知ってもらいたい。
- ●つむじ風 2月26日
- 激甚化・頻発化する水害から国民の生命と暮らしを守るための新たな水害対策として、流域全体で治水対策に取り組む「流域治水」。官のみならず企業や団体などあらゆる関係者との連携が重要となっている▼国土交通省は、流域治水に取り組む・支援する企業等を流域治水オフィシャルサポーターとして認定しており、25年度の認定に向けた募集を始めた。すでに県内企業も認定され、流域治水に関する情報をウェブページやSNSで情報発信するなどの取り組みを行っている▼サポーターの条件として、企業等のウェブサイトやSNS、広報誌、ポスターへの情報掲載をはじめ各種イベント、セミナー、学会、講座、研修などでの紹介。貯留施設の設置など治水対策に資する取り組みの実施、防災活動への積極的な参加―などを挙げている▼ある企業では、流域治水のポスターや広報資料を社員が社内外や取引先などにも伝えることで、水害予防に対する理解を広めているという。流域治水を考えるきっかけを作りながら、流域全体の総合力で安全・安心を実現したい。
- ●つむじ風 2月25日
- 20年に宮古工高と宮古商高、24年に福岡工高と一戸高が統合。25年には久慈工高と久慈東高の統合が予定されるほか、水沢工高と一関工高の統合も将来的に計画される。工業高校を巡る環境が大きく変化している▼各工高の学科数も減り、建設業の担い手確保にも与える影響は大きい。人口減少下での統合には、やむを得ない面もあるのかもしれないが、専門校の特長を考慮した統合を願う業界関係者も多いことだろう▼専門校が地元からなくなったことを受け、地元から他地区の専門校へ通学できるよう、アクセス性を良くする施策を求める声も聞かれる。専門校の持つ魅力のPRなども合わせた施策が望まれる▼来月5、6日には県内県立高校の入試が予定されている。地域差などもあるが、志願倍率では、普通校などに比べて倍率が低く厳しい状況の専門校が多く見受けられる。県内の高校入試では、今年度から推薦入試に代わって特色入試が採用されるが、取り組みの趣旨とされる志願倍率の低下等への対応、各高校の魅力化や特色化の推進につながってほしい。
- ●つむじ風 2月21日
- 県は建設関連業務における簡易総合評価落札方式の見直しを行う。4月1日以降に公告する業務からの適用。総合評価の対象を現行の「500万円以上」から「1000万円以上」に引き上げるとともに、簡易な業務は設計金額にかかわらず価格競争とする▼この変更は、建設関連業務における受注の偏在を解消することを目指すもの。業界団体からも見直しを求める声が上がっており、県では今回の措置を通じて、県内企業の受注機会拡大を目指す考え▼建設関連業務で条件付一般競争入札と失格基準価格の試行がスタートしたのは08年度。前年度は全体の1割近くが落札率50%を下回り、10~20%台という極端な低価格での受注もあったようだ▼以降は条件付一般競争の全面実施、失格基準の見直しなどを行いながら、簡易総合評価落札方式は12年度のスタート。極端なダンピングはなくなり、業務成績が受注に反映されるようになった。それでも当初は想定していなかった課題も出てくる。入札制度に完成はない。必要な見直しは、迷わずスピード感を持って。
- ●つむじ風 2月20日
- 例年、この時期は、県内14市の新年度予算案が発表される。記者会見の場が設けられた際には、新年度のまちづくりに向けた市長の思いを聞くことが出来る▼最近の例を挙げると、久慈市の記者会見では、遠藤譲一市長が地域活力の創出へ、「予算の数字としては表れていないが、浮体式洋上風力発電の取り組みは一定の準備段階にあり、来年度はもう一段ステップを進めたい。久慈港の基地港化にも力を入れていく」と展望。滝沢市の会見では、武田哲市長が「滝沢市は県北振興の入り口の役割も大きいと考えている。周辺市町村と連携し、方向性を確認しながら県北振興の取り組みを進めていきたい」と語った▼県の構想路線に位置付けられた(仮称)久慈内陸道路の早期実現なども、将来の県北振興を見据えた代表的な取り組みと言える。県北地域は畜産業や漁業をはじめ、農林水産分野でも強みを持っている。新年度も引き続き、県北地域の強みを引き出す事業展開を期待したい。地域や地場産業の振興のためには、基盤をなすインフラ、建設業界の存在が大きい。
- ●つむじ風 2月19日
- 高校で必修の「総合的な探求の時間」。専修大学北上高校は、その時間を専探(SENTAN)と称している。現在、北上市とコラボし北上駅から同校まで「歩きたくなる道とは?(通称・ウォーカブルゼミ)」に取り組んでいる▼北上市は、都市拠点の形成に向け市中心部の再整備を計画。北上駅鍛冶町線を「まちなかの背骨」と位置付け、居心地が良く歩きたくなる道路の整備を検討中だ。ウォーカブル化を図ることで整備効果を点だけでなく面的な波及にも期待を寄せている▼先日の市景観フォーラムで、ゼミの取り組みが紹介された。同路線の白地図に書き込まれた彩り豊かな空間活用のアイデアには、ウォーカブルという問いを自分事として捉え、その問いから学びを深めている様子が感じられた▼フォーラムでは、高校生を交え3~5人がグループとなり話し合った。各グループからの提案を見ると、ウォーカブルのキーワードの一つは「居場所」だろうか。いろいろな声を聞き、問いを深め、どのような未知(道)の答えが導き出されるのか楽しみだ。
- ●つむじ風 2月18日
- 宮古市内では、わさびの加工を手掛けるカネ弥㈱(釜石市)が、同市臨港通の既存建物を活用し、新工場の立地を計画。4月の操業を目指し準備を進めている▼立地場所は、同市臨港通403番1ほか。工場では、わさびの1次加工に加え、わさび製品の製造を開始するほか、新たに地元水産物・アカモクを使った製品の製造も予定している。宮古市では33社目の誘致企業で、製造業としては2013年1月以来、12年ぶりの新規立地。県産わさびとアカモクの消費拡大、地域の雇用拡大に期待が寄せられている▼以前、沿岸部に立地した畜産関連企業を取材した際、企業側は立地を決めた要因として、「三陸沿岸道路が整備されたことも判断する上でかなり大きかった」と語っていた。円滑な物流を支える幹線道路は、企業立地の重要な判断材料になっている▼県内では、沿線自治体から三陸沿岸道路の交通環境の充実や、横軸幹線のさらなる整備が要望されている。地域の産業振興を後押しするためにも、道路ネットワークの整備促進と機能強化が求められるだろう。
- ●つむじ風 2月17日
- 県内自治体の新年度予算案が公表され始めている。ある自治体の会見では、「事業費の大きさが独り歩きしないよう配慮して報道してほしい」と強調していた。自治体自体からの持ち出しとなる一般財源についてはそれほど多くなく、国からの交付金や地方債などが事業費の大部分を占めるということのようだ▼その自治体では、規模の大きな事業を構想するものの、その事業費の多さから、「自治体の財政がひっ迫することになるのでは」「巨額の事業費を投資するほどの事業なのか」などと、地元住民らから反対する声が少なからずある。こうした風潮を受けてのことと思われる▼公共事業には、多くの費用が投じられるものが多い。頻発する自然災害や老朽化する公共施設への対応など、業界人であれば誰もが必要性を理解しているだろうが、一般にはどれほど浸透しているのだろう▼三陸沿岸道路にも「人口減少が進む中、こんな立派な道路を造る必要性があったのか」といった声が、被災地からも耳にすることがある。改めて、必要性の広い周知が大切に感じる。
- ●つむじ風 2月14日
- 埼玉県八潮市での道路陥没事故を背景に、インフラの維持管理に対する関心が高まっている。先日放映されたBSの討論番組の中で、コメンテーターの一人が「インフラを維持するためには、建設企業をいかに潤していくかが課題だ」「人材育成や設備投資などを行うためにも、先々を見通した建設投資が必要」という趣旨の発言をしていた▼約120万人が半月近く下水道使用制限の影響を受け、トラック運転手の安否が未だ分からない中にある。これだけの犠牲を払わなければ社会の関心を引くことができないのかと忸怩たる思いの関係者も多いだろう。あるいは「せめて一歩前進」と前向きに捉えるべきなのか▼中央自動車道笹子トンネルの崩落事故を教訓として、インフラの老朽化対策に取り組むため「社会資本メンテナンス元年」が掲げられたのが2013年。果たして今日まで、この理念がどれだけ一般に浸透しただろうか。かくも世間の関心は移ろいやすい。社会資本の長寿命化や国土強靱化を着実に進めていくためには、より深い世論の醸成が求められる。
- ●つむじ風 2月13日
- 10日に行われた国道340号宮古岩泉間整備促進期成同盟会による県への要望。同盟会側は地域の実状を交え、宮古市―岩泉町間全線の道路整備計画を示すことや、未改良区間の早期事業化などを強く要望した▼県は現在、同市和井内~押角、同町浅内の2工区において改良事業を進めている。双方向から同一路線の事業を進めており、県内でも珍しい事例の一つと言えるだろう▼実際に道路を走行すると、トンネルなどのある改良済み区間と、未改良区間との違いがはっきりと分かる。同盟会側は、16年台風10号や24年台風5号での地域における道路被害を踏まえ、代替ネットワークの重要性を強調。「地域住民の命が掛かっている道路だ」「緊急性を持って整備の促進を」と訴え、重要な道路であることを県に伝えていた▼県では地域の協力のもと、着実に整備を進めるとともに、国に対し引き続き公共事業予算の安定的・持続的な確保などを働き掛けていく考え。同盟会・県ともに、国に対し粘り強く「命の道」の重要性を訴え、整備促進につなげたい。
- ●つむじ風 2月12日
- 県電気工事業工業組合大船渡支部は先月末、講師として県立大船渡東高校の第一種電気工事士技能講習会を支援。機械電気科1、2年生に資格試験で必要とされる技能を指導した▼講習会では、生徒が6班に分かれ、第一種電気工事士技能公表問題の製作に挑戦。講師のアドバイスを受けながら、配線図などを基に電気回路を組み、一種試験のレベルや、二種の資格との違いについて理解を深めていた▼一種試験を目指す生徒からは、「初めてで難しい部分もあったが、受験に生かせる勉強ができて良かった」との感想も聞かれた。講師が作業する手元を真剣な表情で見つめていた生徒にとって、講習会はプロの手際や技能のこつを学ぶ貴重な体験になっただろう▼当日講師を務めた支部会員は、「昨年11月の電気工事技能競技全国大会で、岩手県の選手が銅賞に輝いた。本県は3大会連続で上位に入賞しており、岩手の業界にはスキルの高い人が多い」と伝えていた。ぜひ、若手に先輩電気工事士の技能を見て学んでもらい、岩手のレベルを支える存在になってほしいと思う。
- ●つむじ風 2月8日
- 年齢を重ねていくと、会話の話題は身体に関する数値になってくると揶揄されるように、体調が変化してくる。人手が減り、高齢化が進む業界にあって、ベテランの社員に少しでも長い年数を働いてもらえるよう、健康に配慮した取り組みの大切さは増している▼健康に関する取り組み事例はさまざまあるが、そうした取り組みで働きやすい職場を形成していくことは働き方改革の一環となり、担い手確保につながっていくものと思う▼各労基署などが示すデータを見ても、全産業を通じて健康診断での有所見率は高く推移している。健康保持の増進につながっていく取り組みは、急がれる状況となっている▼県内の農場で立て続けに発生している高病原性鳥インフルエンザの対応でも、作業前に行う検温などの問診や診察で、血圧が高めだったことなどで作業に当たる健康状態にないと判断され、作業に従事することができなかった作業員がいたと聞く。血圧に関しては、これから作業という状況下で、気持ちが高ぶり高めの血圧となった作業員もいるかもしれないが…。
- ●つむじ風 2月7日
- 24年12月末現在、県内建設業における労働災害による休業4日以上の死傷者数は186人。速報値ベースなので、最終的な人数は確定値を待たなければならないが、このままいけば10年以来の200人割れが期待できるかもしれない。岩手労働局では「労働災害防止に向けた業界の取り組みが成果として現れている」と評価し、建設業における労働災害減少の傾向を維持したい考え▼事故の型別で見ると、依然として「墜落・転落」が最も多く、全体の30・1%。起因物は建物や足場が最も多いが、脚立など用具からの墜落もほぼ同数とのこと。また重機から乗り降りする際も含め、比較的低い場所からの墜落・転落が多いようだ▼労災による死亡者は5人で、うち土木工事が4人と工種別な偏りはあるものの、事故の型別はばらばらで、特定の傾向は見られない。ただし、車両や建設機械の進行方向など、基本的動作の確認不足が背景にあるケースが目立つように思われる。低い場所での墜落・転落への対策も含めて、何よりも基本の徹底。やはりそれに尽きるか。
- ●つむじ風 2月6日
- 先日、盛岡市内の建設会社で働く若手社員に話を伺う機会があった。その若手社員は、昨年4月に入社したとのこと。建設業に入る前、入った後の印象を聞くと、「工事現場では、先輩から厳しく怒られるのではないかと思っていた。実際に入ってみると、そのようなこともなく、先輩や職人さんに優しく教えてもらい、日々の現場が楽しい」と笑っていた▼工事現場では、現場監督や職人をはじめ、多くの人が携わっている。建設業は裾野の広い産業。人それぞれが持っている強み、長年培ってきたノウハウや技術力を発揮しながら、日々の現場づくりが進められている▼「人とのコミュニケーションも心掛けており、自分としても成長を実感している」。その若手社員は、現場の先輩の言葉を受け止めながら、人としての学びを深めているようだった▼弊社においても、昨年4月に入社した女性記者がいる。今では、インタビュー取材などの場面で力を発揮してもらっている。建設業を通じて、成長につなげてほしい。こういった側面からも、裾野の広さを感じるものだ。
- ●つむじ風 2月5日
- 「あなたの地域の浸水を察知し迅速な行動へ」。国土交通省は、ワンコイン浸水センサ実証実験に新たに参加する自治体や企業・団体等を募集中だ。センサを用いてリアルタイムに浸水状況を把握し、防災行動につなげる仕組みの構築を目指す▼「浸水センサを活用することで、浸水範囲や浸水深を早期に把握することが可能となるため、避難情報発令や通行規制の判断や面的な被害状況の把握につなげたい」。これまで、実証実験に参加した自治体関係者の声だ▼22年度から実証実験がスタート。国交省側が用意するのは9社のセンサ。本県では24年度に岩手大学が参加し、盛岡市と紫波町、矢巾町でセンサを設置。浸水センサ表示システムは試験的に公開されており、紫波・矢巾町内の状況が示されている▼近年、大雨による浸水被害や河川の氾濫が頻発している。浸水の状況をいち早く把握し、迅速な災害対応を行うことが重要となっている。公募期間は今月28日まで。現在は、センサの特性や情報共有の有効性などを検証している段階だが、広まってほしい取り組みだ。
- ●つむじ風 2月4日
- 旧商業施設「キャトル宮古」跡地の再整備を計画する宮古市。整備の事業内容などを検討するためプロポーザル方式で実施した官民連携検討業務は、このほど受託候補者が選定され、月内での契約締結が見込まれている▼宮古駅前に立地していた旧キャトル宮古は、1980(昭和55)年に開業。約40年にわたり中心市街地の商業施設としてにぎわいや経済をけん引してきたが、21年12月に閉店した。市では駅前のにぎわい創出を図る再開発に向け、店舗用地や建物を22年12月までに取得していた▼今回プロポを実施した業務は、民間のノウハウを取り入れながら新たな空間・施設づくりを図るため、事業の内容や手法などを検討するもの。順調に推移すれば業務の履行期限は25年度までで、設計・工事への準備を進めていくことになる▼中心市街地の衰退への対策が急務となっている中、いかにしてキャトル跡地ににぎわいを形成し、周辺商店街へ波及させていくか。将来を見据えた手法を検討しつつ、持続可能なまちづくりに向け計画の具体化を図ってほしいと思う。
- ●つむじ風 2月3日
- 岩手労働局がまとめた24年の県内における労働災害の発生状況を見ると、休業4日以上の労働災害は速報値で建設業が186人。長期的に減少傾向にあるうえ、最少となっている。ただ、死亡災害は前年より増え、発生件数も増加した地域があるようだ▼傾向については、墜落災害が突出しているほか、60歳以上の高年齢労働者の災害が多くなっている。この辺りの災害防止を重点に現場管理していくことが、無事故での施工に向けたポイントの一つになっていくと思われる。墜落災害は重大災害につながりやすく、高年齢者については、ちょっとしたことも身体能力の低下などから重症につながる恐れがある▼きょう3日は、立春と暦の上では春を迎えた。実際には寒い日々が続き、転倒災害をはじめとする冬季特有災害への注意も引き続き求められる▼岩手労働局が提唱する「いわて年末年始無災害運動」は1月末までの期間で、各業者とも重点事項に取り組んできたことと思う。「冬季転倒災害防止対策強化期間」については2月末までで、あと1カ月間ほど続く。
- ●つむじ風 1月31日
- 取材先との雑談の中で聞いた「にぃまるごぉまる問題」という言葉。カーボンニュートラルの達成目標や超高齢社会の到来など「2050年問題」かと思えば「20代と50代の社員はいるが、30代、40代がいない」とのこと▼そういえば企業の在り方や働き方を議論する際、視界にあるのは主に50代以上と20代以下。上はハラスメントの加害者、下は働き方改革の対象として。30代、40代の影はどうも薄い▼音楽評論家のスージー鈴木氏が、昨年2月16日付の東洋経済オンラインで「昭和世代とZ世代の狭間にある矛盾の中、最も頼りになり助けてくれたのが30代の平成世代」という主旨の記事を掲載していた。大手広告代理店で管理職を務めた同氏らしい鋭い指摘だ▼年明け早々に発生した鳥インフルエンザ。1日夜にニュースを確認して「建設業協会はすでに動き出したかな。うちも対応しないと」と考えながらの翌朝、弊社30代記者から「協会本部で取材に入ります」の連絡。ほぼ同時に県庁の対応状況について連絡をくれたのも、別会社で働く30代記者の友人だった。