コラム集
- ●つむじ風 10月11日
- 先ごろ本県で開かれた日本型枠工事業協会の「北海道・東北連絡協議会」の席上、型枠工事業が抱える諸課題について意見交換した。労務費や法定福利費、週休2日(4週8休)への取組状況などが各道県から報告された▼目立った意見は「土木の現場は土日の休みが徹底されているが、民間建築で休めるのは日曜のみ」「大手の現場でも完全週休2日は困難」「地場ゼネコンの現場では土曜日に仕事をするのは当たり前」など。各県で「公共工事は毎週土曜日を休みに」などのスローガンを掲げるも、最前線で働く人たちの現実とはまだ乖離があるようだ▼本県からは「県建設業協会が第2・第4土曜閉所に取り組んでおり、公共では建築の現場も休めるようになっている」との報告があった。「さすが岩手は真面目に取り組んでいる」と素直に喜んでよいものか▼「スローガンは建前。現実は違うのさ」と言われればそこまでだが、週休2日の達成は目的でないし、スローガンを掲げただけで満足しては足元を見られるだけ。目的を見失わないように取り組みたい。
- ●つむじ風 10月10日
- 国道340号宮古岩泉間整備促進期成同盟会(会長・山本正德宮古市長)は、12日に岩泉町内の会場において、道路整備の促進に向けた住民総決起大会の開催を予定している。沿線の地域住民ら、多くの関係者が一堂に会する貴重な場となる▼国道340号は、両市町の内陸部を結ぶ唯一の幹線道路として、地域の産業や経済、文化の交流などを支えている。県では20年度に和井内~押角工区、22年度に浅内工区の道路改良をそれぞれ事業化し、未改良区間の解消に向けた取り組みを鋭意進めている▼以前、総決起大会を取材した際には、地元小中学校の児童・生徒らが道路整備に寄せる思いを発表し、「夢と希望を運ぶ道路になってほしい」などと大きな期待を寄せていた▼国道340号は急勾配や急カーブが連続しており、間違いなく県内における交通の難所の一つだ。地域の安全・円滑な道路ネットワークを構築しながら、地域防災力を下支えする重要な路線として着実に整備を進めてほしい。総決起大会は、事業の必要性などを強く訴える機会となる。
- ●つむじ風 10月9日
- 日本下水道管路管理業協会(長谷川健司会長)主催の下水道管路管理技術施工展2024が3日に開かれた。本県では初開催で、45団体がブースを出展し、最新技術の展示や工法などのデモンストレーションを行った▼当日は、肌寒くあいにくの天気だったが、各ブースでのデモや担当者らの説明で熱気にあふれていた。当日の開会式で、長谷川会長は開催に至るまで葛藤があったことを明かした。ある下水道工事において、豪雨で水位が急上昇し、作業員が死亡した事故が9月に発生したためだった▼その現場では、水位上昇後、5分で強い流れになったという。「現場の安全をどう担保するか意識すべき」と強い口調で訴えた。各ブースでは、安全管理に触れながら、各種工法などの説明を行っている様子が見られた▼下水道をはじめ道路や橋梁など社会資本は、住民の安全・安心な生活を支えている。それらの技術は、日進月歩で革新が進んでおり、取材を通しても感じている。技術革新により大きな恩恵を受けるが、安全性を確保した上での技術でなければならない。
- ●つむじ風 10月8日
- 東北地方整備局三陸国道事務所が進める、三陸沿岸道路「山田北インターチェンジ(IC)」のフル化事業。6日には起工式が行われ、今後、北方向の乗り降りランプを増設する工事が本格化していく▼同ICのフル化に向けた改良は、台風災害による国道45号の通行止めを踏まえ、災害時の幹線機能の確保や、救急医療の支援、通勤などで起こる渋滞を緩和するため22年度に事業化。三陸沿岸道路では、宮城県南三陸町の歌津北IC、洋野町の洋野種市ICに続く3カ所目のフル化工事となる▼三陸沿岸道路の機能強化に向けた動きとしては、田野畑チェーンベースと村道との連結が同意され新ICが誕生する運びとなったほか、宮古市内の津軽石パーキングエリアには、トイレ棟の新設も計画されているところ▼沿線自治体からは、さらなるフルIC化や新ICの整備、交通の円滑化に向けた4車線化、付加車線の延伸などが要望されている。三陸の地方創生を支えるためにも、引き続き三陸沿岸道路の利便性向上、機能強化に向けた取り組みを図っていく必要があるだろう。
- ●つむじ風 10月4日
- 県は25年度当初予算における公共事業(通常分)を、24年度当初予算の1・00以内とする方針を示した。23年度の1・10以内、24年度の1・05以内と2年連続のプラス傾向から3年ぶりのゼロシーリングだが、前年度の経済対策分を含めた実行予算ベースを勘案するとしている▼中期財政計画では公共事業を24年度当初×1・00として、約594億円で推移すると試算。数字の一人歩きを承知の上で言えば、当初予算における公共事業は当面、600億円前後と見るべきだろうか▼さまざまな場面で「震災以前の水準をキープ」と聞くが、震災前に編成された11年度当初予算は780億5100万円。県は「国の動向を踏まえた上で、必要に応じて別途協議を進める」としており、12月と2月の補正予算で国の経済対策などに適切に対応することが求められる▼事業費は横ばいでも、資材価格や人件費、エネルギーコストなどが上昇しており、一日の作業時間も限られている。前年と同額は実質的にはマイナスシーリング。当局も十分理解はしていると思うが。
- ●つむじ風 10月3日
- 最近では、能登豪雨関連のニュースを多く目にする。「地震被害に続き、同じ地域で豪雨被害が―」と感じずにはいられない。私見になるが、能登の状況は、東日本大震災からの復旧・復興の最中、台風で被災した沿岸地域の状況に重なるような気がしている▼県北広域振興局土木部では、19年東日本台風への対応として、久慈市内を流れる小屋畑川と長内川の河川改修事業などを進めている。現地を訪れてみると、河川改修に伴い架け替えが必要な橋梁の下部工工事などに取り掛かっていた▼同部では、21~26年度の6年間で河川改修事業を推進していく予定。24年度は橋梁などの構造物工事を中心に進めていき、25年度以降に河道掘削を本格化する計画となっている▼県内各地域では再度災害の防止に向けて、さまざまなハード対策が進められている。社会資本整備は、形として目に見えることから、地域住民の安全・安心を精神的にも支えていることだろう。広い県土を守っていくためには、地元建設業界の力が不可欠。ニュースを見ながら、思いを強くしている。
- ●つむじ風 10月2日
- 目的地までの国道は渋滞が予想されるため、並行する路線を選択することがある。田園地帯の見通しの良い路線。スピードに気を付けながら走行するように意識しているが、見通しの良い交差点では特に注意が必要だ▼車両が少なく、信号で停止することもないため快適に走行できるのだが、そこに落とし穴が潜んでいる。田園型事故と言われている。コリジョンコース現象とも言われ、運転者が相手の車両が近付いたことに気付かない、あるいは止まって見える現象という▼交差する道路の幅は、自分が走行している道路よりも狭く見えるという錯覚が生じてしまうため、走行している道路が優先だと思いこんでしまうことがある。お互いに優先道路だと思い込み、スピードを落とすことなく交差点に進入してしまったら大事故につながることは想像に難くないだろう▼運転には常に危険が潜んでいる。現場事務所から現場まで、会社から現場までという何度も行き来する道路こそ注意が必要だ。ハンドルを握った際には、「思い込み」や「慣れ」を排除しなければならない。
- ●つむじ風 10月1日
- 先週は、県沿岸広域振興局土木部大船渡土木センターの主催で、陸前高田市立高田第一中学校の1年生が、宮古市内で建設中の閉伊川水門を見学。国内最大級となる津波水門の現場の迫力を体感していた▼同水門は、県の復興工事として最後の整備となるもの。宮古市街地を守るため閉伊川河口部に新設しており、規模は水門本体の延長が164・4㍍。ゲート数は4門で、津波を防御するカーテンウォールの高さはTP+10・4㍍。26年度の全体完成を目指し、工事の進捗が図られている▼水門は左岸側が完成済み。右岸側では基礎杭約400本の打ち込み作業を終え、現在、躯体工に入っている。見学会では、完成部分の巨大な水門を間近で仰ぎ見たり、右岸側の川底で大型重機が動く光景を覗き込む生徒の姿も見られ、貴重な体験となった様子だった▼次世代を担う子どもたちにとって、こうした記憶に残る体験は、建設業の魅力や重要性を知るきっかけになるはず。今後も、官民で建設業に親しむ取り組みを進め、将来の担い手確保につなげてほしいと思う。
- ●つむじ風 9月30日
- この時期は、さまざまなイベントなどが週末に多く催され、その取材に出かける機会に恵まれる。イベントに参加するメンバーには、各団体青年部の年代も多い。以前に取材した週末のイベントでは、わずか数人程度で苦労しながらの運営に人手不足が見て取れ、「多くのメンバーが子どもの行事で参加できなくて仕方ない」と話していた▼青年部には、年頃の子どもたちを持つ世代も多い。会員数自体が減ってきているのも相まって、イベントへの参加は大変になってきているようだ。催す内容の縮小や日数を減らす対応のほか、行事自体をなくしたケースもあるだろう。やむを得ず、可能な範囲で対応していくしかない▼家庭を持つようになると、子どもがらみの行事等で忙しくなる。子どもの急病によって、仕事を休まざるを得ないなど、スケジュールの変更を余儀なくされる場合もあり、子どもたち優先の生活スタイルになる▼男性の育児休暇取得など、現代の生活スタイルに合わせた企業経営が求められている。人手不足の中だが、しっかりと対応したい。
- ●つむじ風 9月27日
- 10月1日から「全国労働衛生週間」が実施される。労働衛生週間は1950年のスタート。労働者の健康管理や職場環境の改善など、労働衛生に関する国民の意識を高め、職場の自主的な活動を促して労働者の健康確保を目指すもので、今年が75回目。「全国安全週間」ほどではないが、なかなか長い歴史を持つ▼今年は「推してます みんな笑顔の 健康職場」をスローガンに、「働くみんな」が健康確保への対策を進めることで、誰もが快適で健康に働くことができる職場づくりを目指していくという▼2023年の定期健康診断の結果を見ると、建設業の有所見率は68・0%。全産業の64・6%を上回り、主要業種別では道路貨物運送業の74・3%に次ぐ高い割合。項目別で見ると、血糖、血中脂質、肝機能、血圧などの割合が高い。このうち血中脂質以外は、主要業種の中で最も高い数字▼労働衛生週間をきっかけに日頃の生活習慣を見直し、健康で元気に働ことができる職場をみんなでつくっていきたい。災害からの復旧・復興も、そこで働く人の健康があってこそ。
- ●つむじ風 9月26日
- 県と県建設業協会(向井田岳会長)は先日、建設業における課題等に関する意見交換会を開いた。建協は建設業を取り巻く課題を踏まえ、各地域における公共事業費の確保などを県に要望。さらに国土強靱化などに向けた予算確保の重要性に関して、双方の認識を共有した▼建協側は「近年、自然災害や気象条件で、想像できないことが起きている。官民で力を合わせて地域のために頑張りたい」と呼び掛けた。向井田会長は河川整備をはじめ、県内のハード対策の意義・効果と必要性を訴えていた▼県側は「さまざまな機会を捉え、地域の実状を国に伝える。施策を提案することで、安定的・持続的な予算確保に努めたい」との考えを示した。さらには「県が実状を説明し、業界からも要望を展開するなど、両輪での取り組みを進めたい」とも▼本庁職員と、建協本部・各支部が集う意見交換会そのものも貴重な機会。全県的な課題を整理するとともに、県土の発展に向けた認識を一致させることができる。引き続き現場の声を反映し、岩手の建設業を盛り上げたい。
- ●つむじ風 9月25日
- 「高校生に職人の魅力を発信!」。協同組合岩手専門職人育成会(千葉琴音理事長)は17日に、北上市で企業説明会・職業体験事業を初めて開いた。同日は、県立盛岡・黒沢尻・水沢の3工業高校の生徒ら約150人が集まった▼午前の会社説明会に続き、午後からは職業体験。職業体験では、業種ごとに12ブースに分かれた。重機や測量機器の操作をはじめ、照明配線や型枠組立、仮設、木造建築、屋根板金、塗装、ガラス加工、防水などを体験した▼塩ビ管スピーカーの製作では、生徒らが寸法を測り、切断して仕上げた。複数の生徒から「塩ビ管同士がぴったり合った瞬間が気持ち良かった」との感想。土木科の生徒からは「授業では学ぶことができない電気の配線や畳の製作などを体験できて良かった」と話していた▼岩手専門職人育成会のパンフレットには、「職人たちの技術を引き継ぐことができるのも、“人”でしかないのです」とある。取材時の何気ない会話の中で、職人らの人柄に魅力を感じた。今後も、幅広く活動を展開し、新しい風を吹かせてほしい。
- ●つむじ風 9月20日
- 台風5号および8月15日から9月2日の大雨は、県北沿岸部や盛岡地域を中心に甚大な被害をもたらした。県内公共土木施設の被害状況は9月6日の時点で261カ所、復旧概算費は91億2757万5000円にのぼる▼災害を教訓とした治水対策事業や「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」などが効果を発揮して、被害を最小限にとどめた箇所も多かった。一方で8月27日のような線状降水帯による局地的な大雨に対しては、ハード対策による事前防災だけではカバーしきれない部分も出てくる▼となると避難を含めたソフト面の対策が重要になる。県では台風接近時など風水害が予想される場合に参集して市町村への助言内容を検討し、県に対して助言する「風水害対策支援チーム」を設置するなど、ソフト面の強化に努めている▼当然のことながら、応急対策に従事する地域建設業を健全に維持することも重要なソフト対策。地域防災に対してハードとソフトの両面からアプローチできる産業として、その社会的価値が広く共有される必要がある。
- ●つむじ風 9月19日
- 県沿岸広域振興局土木部岩泉土木センターが実施している土砂災害から身を守るための出前講座。管内の小中学校の児童・生徒を対象に、砂防堰堤によるハード対策、防災教育などによるソフト対策の重要性を伝えるものとなっている▼先日、岩泉町立小川中学校での出前講座を取材した。生徒らは、砂防堰堤の模型実験やパソコンでの土砂災害警戒区域の確認、現地の施設見学などを行い、土砂災害への備えの大切さを学んでいた。生徒からは「模型の場所を入れ替えるだけで、こんなに被害が変わるんだ」との声も▼講座には地域おこし協力隊の方も1人参加していた。県外から町にいらした方で、岩泉に生まれのルーツがあるそう。「自分が知らないことばかりで勉強になった」と話していた▼同土木センターの職員らは、分かりやすい表現を用い、ハード対策とソフト対策のことを訴え掛けた。職員らが笑顔で語りかけ、クイズを交えたりするなど、楽しく学習できる場になっていたように感じる。どの年代でも、興味を引く内容には聞き入ってしまうものだ。
- ●つむじ風 9月18日
- 公益財団法人いわて産業振興センターは、北上市村崎野の北部産業業務団地内に半導体関連人材育成施設(仮称)の整備を計画。13日に現地で起工式を行い、来春の開設に向け本格着工した▼産学官が連携し半導体製造装置エンジニアの育成と確保に取り組むのは全国初。同施設は、半導体製造装置のエンジニア育成を中心に、次世代の人材育成、DX情報発信の機能も担う▼起工式には、いわて半導体関連産業集積促進協議会の柴山耕一郎会長(キオクシア岩手㈱代表取締役社長)。あいさつの中で、全国的な半導体人材の不足に触れ、「企業の競争力の源泉は人材」と断言する▼式典後の取材で、全国的・世界的に人手不足の中、人材の奪い合いにならないのかとの質問。柴山社長は、私見としつつ、「子どもの頃から半導体に触れ、興味を持ってもらうことが重要」と裾野を広げることの重要性を説いた▼魅力を発信し、興味をもってもらうこと。子どもの頃から触れること。人材各確保に欠かせない視点だろう。当たり前のことだが、地道に続けていくしかない。
- ●つむじ風 9月17日
- 奥州市胆沢に位置する胆沢ダムは、2013年11月に竣工してから、今年で10周年を迎えた。10周年記念事業として、国や県、地元市町などは実行委員会を組織。さまざまな記念イベントの開催を予定している▼一環で、ダム周辺や下流域の住民らと一体感を持って盛り上げ、さまざまな記念イベントや胆沢ダムとその周辺地域の魅力を発信するためにロゴマークのデザインを募集し、このほど決定した。募集作品からは胆沢ダムに思いを馳せ、熱い思いが感じられたとしている▼胆沢ダムの建設工事は、24時間体制で作業が進められ、施工期間中には岩手・宮城内陸地震が発生するといった事態もありながら完成した。たびたび現場を取材で訪れる機会に恵まれたが、多くの作業員が携わった様子、50㌧ダンプをはじめとする大型機械、現場のスケールの大きさなどは、10年以上が経過した今でも強く印象に残っている▼10年を契機に、ダムがさらに親しまれ、ダムを生かした地域振興の推進が期待される。施工に携わった人たちが再認識される機会にもなってほしい。
- ●つむじ風 9月13日
- 本県における総合評価落札方式の第1号が落札決定したのは、06年の9月上旬。懐かしの受注希望型指名競争入札で、予定価格8810万2000円に対する落札金額は5番札の6592万円だった。落札率は驚きの74・8%。今なら間違いなく失格か▼それから20年近くが経過し、県工事の平均落札率は92%程度で落ち着いている。この数字が適正であるか否かは別として、少なくとも過度なダンピングが排除されている点では、入札制度の見直しは一定の効果を発揮していると言えるだろう▼一方で、ここ数年話題に上がるのが受注の偏在。「総合評価が持ち点勝負となり、受注できる企業と受注できない企業の格差が拡大している」との声が多方面から聞かれるようになった▼県と業界団体との意見交換の席で、県電業協会と県空調衛生工事業協会が、総合評価における業種別の評価項目の設定を提言。塗装業界からも同様の要望が上がっている。県側も問題意識を持っている様子。専門工事業が安心して力を発揮できる環境を、入札制度からも整えてもらいたい。
- ●つむじ風 9月12日
- 県土整備部では、多くの媒体などを通じて、インフラの整備効果を発信している。これまでも冊子やSNS、パネル展、出前授業など、さまざまな機会を捉えつつ社会資本整備の重要性をPRしてきた▼同部河川課では、インフラのストック効果という視点から、小本川と安家川(岩泉町)、滝ダム(久慈市)が台風5号で効果を発揮した事例をホームページなどで紹介している▼小本川などでは、河川改修事業を実施してきたことに伴い、水位の低減効果が確認された。滝ダムでは大雨の予測を踏まえて事前放流を行い、洪水の容量を確保。洪水のピーク時間を5時間ほど遅らせることができ、水防活動の時間の確保にもつながった▼インフラは、日常的な整備などが行き届いているからこそ、災害時にも効果を発揮するもの。建設業界は地元のインフラの整備・維持管理を直接的に担っている。これからも着実に、社会インフラや建設業の重要性を訴えたい。整備効果などを県民に分かりやすく伝えることは、安定的・継続的な予算確保を進めていく上での基盤となるはずだ。
- ●つむじ風 9月11日
- 県建設業協会北上支部青年部会(菊池栄幸部会長)は8月29日、県立黒沢尻工業高校土木科3年生の就職希望者15人を対象に模擬面接を行った。独特な雰囲気での模擬面接は、取材する側も緊張する▼つっかえながらも、話そうとする生徒。暗記している内容を話そうと、ひたすら棒読みする生徒。ある質問に対し、「私は」と言ったきりの沈黙。5秒以上続くと、こちらの心臓もバクバクし始め、「がんばれ」と心の中で応援している自分がいる▼模擬面接後、ある生徒に感想を聞くと「緊張しなかった。自己採点は90点」と答えた。建設業に従事する父を見て成長し、父と同じ企業で働き、インフラの整備を通して地元に貢献したいと志望動機を話す。生徒の「伝える」思いが、「伝わる」瞬間だった▼菊池部会長は「入社することがゴールではなくスタートライン」と生徒らを激励するとともに、「面接官は敵ではないことも伝えたい」との思いも話す。模擬面接後の的確で親身にアドバイスする場面に立ち会い、その思いは生徒らに伝わったのではないだろうか。
- ●つむじ風 9月10日
- 株式会社共立メンテナンスが陸前高田市の中心市街地に新築予定のホテルは先週、工事の安全祈願祭が開かれ、今後、本格着工に向け現地で準備工が進められていく▼建設場所は、同市高田町並杉地内。陸前高田駅(JR大船渡線BRT)東側のかさ上げ地で、中心部で花火大会などのイベントがあれば、良い眺めが楽しめそうだ。規模は、鉄骨造3階建ての延べ床面積3942・09平方㍍。客室136室を設置するほか、大浴場には温泉を活用する計画で、温泉水は市内の黒崎仙峡温泉から運び入れる方針となっている▼安全祈願祭で佐々木拓市長は、「市内では宿泊施設が不足しているため通過型観光となっており、滞在型を目指してきた本市にとって中心市街地へのホテルの誘致は長年の悲願だった」と語り、「今回のホテル建設は滞在型観光の礎となるもの」と期待を込めていた▼施設は、26年夏の開業を目指す計画。宿泊施設の新設が、教育旅行やスポーツ合宿などの受け入れを促し、市街地を中心としたまちの活性化、交流人口の拡大につながればと思う。
- ●つむじ風 9月7日
- 先日、建設業に従事していた若手職員が、「自分には合わない」と辞めていったエピソードを聞く機会があった。悪天候の現場で、泥だらけになりながらの作業中、出身校の後輩から声をかけられたものの、返答しなかったという▼返答しなかった理由について、泥だらけになった自分の姿に格好悪さを感じ、後輩に見られて恥ずかしかったとのこと。そのことをきっかけに建設業を辞めていったという。勤めていた企業の経営者は、大きな衝撃を受けたと話していた▼「きつい」「汚い」「危険」の3Kに加えて、「帰れない」「厳しい」「給料が安い」の新3Kには、「格好悪い」も含まれる場合があるとされる。現代の若者と一括りにしていいものか分からないが、仕事にしっかり従事した表れだとしても、泥だらけになった姿は格好悪いものと認識される傾向にあるのだろうか▼そうだとすれば、建設業は職場環境が厳しいイメージに留まらず、仕事の内容自体に格好悪いイメージを持たれている部分があると言える。いろいろ考えさせられるエピソードだった。
- ●つむじ風 9月6日
- 達増知事が知事選におけるマニフェストの中に「産業技術短期大学校の県北への新設など地域の産業を担う人材の育成・確保」を掲げたこともあってか、今年度の二戸市からの県要望では、県北地域への産技短設置が要望項目の筆頭に上げられた▼藤原淳市長は「人口減の中、いかに人を呼び込むかを勘案してほしい」と述べて、学科と設置場所が課題と問題提起。さらには、盛岡圏や八戸圏から学生が通ってくるような魅力ある学科の設置を訴えた。達増知事も「県北の産業ビジョンに対応した学科やカリキュラムが必要」との見解を示した上で、再生可能エネルギーなど先進的な産業に貢献できる人材の育成に対する意欲を示している▼県南地域のような大規模な半導体や自動車産業でなくても、地域資源を生かした付加価値の高い産業が創出されれば、若年人材の域外への流出に歯止めがかかり、人材育成への好循環も生まれる。さらには新たなインフラ投資も誘引される。産技短の設置を、県北さらには県全体における産業の在り方を考える契機にしてほしい。
- ●つむじ風 9月5日
- 県土整備部河川課では、県庁舎の県民室で、流域治水の取り組みと8月の台風5号における治水効果に関するパネル展を開いている。開催期間は13日まで。全県下での流域治水の取り組みをまとめたパネル展は、今回が初となる▼お盆期間中の台風5号では、16年台風10号対応で整備した河川や砂防堰堤などが効果を発揮。久慈市の滝ダムでは事前放流と洪水調節を実施し、洪水氾濫の発生を防いだ▼筆者は先日、中居健一岩泉町長にインタビューする機会を得た。特別インタビューという形で、本紙8月30日付で掲載している。中居町長は、台風5号において小本川・安家川で水位低減効果が確認されたことなどに触れ、「河川改修の意義や防災・減災の重要性を肌で感じた」と話した。合わせて、県の河川・砂防事業担当職員や建設業界の尽力に対し、謝意を示していた▼県内には多種多様のインフラがある。地域に必要な社会資本整備を進めていくためには、県民の理解が不可欠。整備効果を正しく発信することも、建設行政・建設業界の「協働の取り組み」だろう。
- ●つむじ風 9月4日
- 岩手中部水道企業団は、組織の災害対応能力の向上を目的に危機管理研修会を開いた。その中で、静岡市上下水道局の職員が「令和4年度台風15号での災害対応」をテーマに講演した▼台風15号の影響で、同市では24時間積算雨量が400㍉を超え、停電や河川の増水が生じ、取水不良や水管橋の落橋などにより一部地区で配水不能となった。自衛隊による支援や水運用、現地での復旧、応急給水などの対応を図った▼印象に残ったのは、「危機管理は情報戦」との言葉。災害初動体制は、情報処理体制の構築と位置付けている。鮮度と精度をキーワードに、情報収集では精度よりも鮮度と量を、情報発信では積極的に鮮度の高い情報の発信をそれぞれ心掛けている。情報収集では、現地調査や電話等の通報に加え、SNS等も活用しているという▼9月に入り、1年の中でも台風が多いシーズンとなる。台風とともに秋雨前線が活発化し大雨となる恐れがあることも忘れずにいたい。情報の重要性を再確認しながら、過去の災害の「振り返り」「分析」を通して次に備えたい。
- ●つむじ風 9月3日
- 県が釜石市内で施工していた尾崎白浜の沢(9)砂防堰堤は、7月末に完成。これで、19年台風第19号の豪雨災害を受け県が進めていた砂防工事は全て完了した▼19年台風第19号では本県沿岸部で300㍉以上の降雨を記録。県全体(4市3町2村)で土石流74カ所、がけ崩れ24カ所が発生した。釜石市内でも市中心部で浸水被害、半島部の尾崎白浜地区等では斜面の崩壊、土砂の流出で道路が寸断され住家が孤立するなど、大きな被害を受けた▼県沿岸広域振興局土木部では被災状況を踏まえ、管内6地区13カ所で計14基の砂防堰堤を整備した。先週、尾崎白浜の沢(9)堰堤前で開かれた砂防工事完成報告会では、県側が施工企業の労をねぎらうとともに、集まった周辺住民へ防災講座も開催。危険な場所などを事前に確認しておく大切さを説いていた▼ハード整備を過信せず、「防災情報を活用し早めに避難してほしい」とも。砂防堰堤の完成で終わりではなく、施設の役割や自然災害の脅威を地域に周知することで、有事への備えを後押しする取り組みも重要だろう。
- ●つむじ風 9月2日
- 日本建設機械レンタル協会東北ブロック岩手支部は、県と家畜伝染病発生時における資機材供給に関する協定を締結。同支部では、これまでも高病原性鳥インフルエンザや豚熱の発生時、資機材の供給に協力してきたが、協定の締結で対応をルール化することなどにより、支援体制がさらに強固なものになるとしている▼家畜伝染病発生に伴う埋却作業の反省点に、必要な資機材等の手配に不備が生じた点が、よく挙がる印象がある。協定の締結で、資機材の調達や運び込み、埋却の作業一連が円滑に進んでいくことが望まれる▼資機材の手配については、県から建設機械レンタル業者へ要請するとともに、埋却作業を担う県建設業協会の会員業者が、建設機械レンタル業者と直接やり取りして手配するケースも多いと聞く。協定は結ばれたものの、円滑な作業に向け建設業者が直接要請するケースも引き続きあると思われる▼建設機械レンタル業者と建設業者との関係は深い。双方が一致協力してこそ、家畜伝染病に加え、災害の発生時などにも迅速な対応が可能となる。
- ●つむじ風 8月30日
- 「線状降水帯」という言葉が本県で広く認知されるようになったきっかけの一つが、13年8月の豪雨災害。当時の東北では珍しいバックビルディング現象による線状降水帯が発生して大雨被害が拡大したことで、注目を集めたと記憶している▼このときは、県建設業協会盛岡支部が盛岡市や雫石町での応急対応に当たった。災害などが発生した際に迅速に対応できる企業を中心に支部役員を構成していたことで、地元自治体と県の要請に対する速やかな対応を可能にした▼以来10年余りが経過し、線状降水帯という言葉も一般化。盛岡市8月の平均気温を見ると、13年の24・2度から23年は27・9度と大幅に上昇した。過去に土砂災害が少なかった本県においては斜面や渓流に不安定土砂が堆積している可能性もあり、災害への備え方が自ずと変化してくるだろう▼建設業界においても限定的かつ激甚な災害に対応するため、改めて地域密着型の防災体制を見直す必要がある。そのためには、行政機関と地元建設業界との信頼関係が不可欠。8月30日に思いを新たに。
- ●つむじ風 8月29日
- 27日には、盛岡市などの各地で大雨が降った。帰宅する時間帯と重なるような形で、大雨が降っていた。本紙の社員同士でも、「病院前の道路が冠水している」「この辺りで、これほどの雨が降ったことはないのでは」との話に―。夜には、市内を流れる中津川の増水などに伴い、広いエリアで避難が呼び掛けられた▼28日には、岩泉町役場のある職員に話を伺う機会があった。その職員の方は、盛岡市から同町役場へ出勤しているとのこと。横断軸の国道455号が大雨の被害で通行止めとなり、「国道106号を利用して出勤した」と話していた▼16年8月30日の台風10号災害から、間もなく丸8年。台風対応のハード事業は終盤戦に入った。しかし、お盆の台風5号や今般の大雨などを受け、改めてインフラの機能強化の重要性を痛感させられる▼県内では、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策により、インフラの強靱化が進められてきた。今後も道路ネットワークの強化など、台風10号からの復旧・復興の先にある社会資本整備について議論を深めたい。
- ●つむじ風 8月28日
- 総務省消防庁がまとめている都道府県別熱中症による救急搬送状況。24年度の累計は、全国では7万6527人が救急搬送されており、本県は580人で、東北6県で宮城県の1093人に次ぐ人数となっている▼本県の発生場所の内訳は、ほぼ半数の271人が住居で発生しており、道路74人、公衆(屋外)、道路工事現場や工場、作業所等の仕事場①は54人、公衆(屋内)45人など。全国的に仕事場①は7031人で、全体の1割を占めている▼環境省の熱中症予防情報サイトでは、指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)を指定している全国の市区町村と一部都道府県のリンク集を公開した。宮古市と遠野市、二戸市、軽米町がすでに指定済みで、盛岡市や花巻市、一関市、岩泉町、野田村では9月末までに同施設の指定を予定している▼気象庁は、9月も残暑が続く予想を示している。現場での熱中症予防対策を徹底するとともに、少しでも異変を感じたら、作業を離れ休憩や病院へ運ぶ・救急車を呼ぶ(病院に運ぶまでは一人にしない)という措置も確認したい。
- ●つむじ風 8月27日
- 中心部の商店街を通る市道末広町線で、無電柱化事業を進めている宮古市。工事は今年度内の全体完成に向け、大詰めを迎えている▼同市では中心市街地の道路について、これまでの車重視から、歩行者・自転車・公共交通を優先させる道路へと方針を転換。中心部で「末広町通り」を形成する同線も、無電柱化によって、安全・安心かつ快適な歩行空間や、災害時の避難経路の確保を図り、まちなかのにぎわい創出につなげていく考えだ▼工事は車道部については全て完成しており、今後、歩道部で残る区間を発注する計画となっている。歩道部のインターロッキングによる美装化を進め、来年3月の完成を目指す。整備では車道の幅を狭め、歩行空間を広く再編。先月からは区間を終日一方通行化しており、車の通行を制限することで歩行者優先の道路にしている▼通りに続く県道宮古停車場線でも、県が宮古駅前の無電柱化を予定しており、今秋から工事が始まる見通しだ。快適な歩行空間、良好な景観を形成することで、メインストリートの魅力を高めてほしい。