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2025年
12月23日(火)
01:54

コラム集

●つむじ風 12月22日
 合同企業説明会に出展者側として参加してきた。実際に立ち会ってみると、多くの魅力的な企業がある中で、弊社に興味を持ち、ブースを訪れてもらえる出来事の得難さとありがたさを強く実感する▼弊社のみならず、建設業界においても、担い手不足が叫ばれて久しい。対策としてICTの導入やDXの発展が進み、省人化が進んでも、社会が人と人の関わりに根差して発展している以上、最後には人の力が必要になる。しかし、その支え手になる人がいないジレンマ▼安全パトロールの取材に伺った際、自分にも現場の感想を話す機会をいただいたことがある。素人なりの感想にも、熱心に耳を傾けていただいた。拙い感想だったと自省していると「立場が違えば、ものを見る目線も違うものだし、挙げられた意見が安全につながっていく」と激励までいただいた▼集団をより洗練していくためには、物事を見つめる多くの目が重要なのではないだろうか。「目」の多様性を保つためにも、改めて担い手確保を重要な課題として共有し、対策を講じる必要がある。
●つむじ風 12月19日
 11月9日に発生した本県三陸沖を震源とする地震で津波注意報が発表され、久慈港と大船渡港で最大20㌢の津波を観測。今月8日の青森県東方沖地震では津波警報が発表され、久慈港では最大70㌢の津波を観測した。この間、県の水門・陸閘自動閉鎖システムは全て適正に稼動していたそうだ▼このシステムは東日本大震災で水門・陸閘の閉鎖作業を行った消防団員48人が津波の犠牲になった教訓を踏まえ、操作員が現地に向かう必要がない体制をつくるために導入したもの。システムの導入が公表されたのが15年1月、本格運用が始まったのが17年7月31日。なかなか歴史のあるシステムであることが分かる▼当然のことだが「自動」はメンテナンスフリーを意味するものではない。10年近くの間、システムと現地の鋼構造物を維持管理する人材があってこそ、有事の際に防災インフラが適正に稼動する。後発地震注意情報の呼び掛け期間は終了したが、緊張感が解けない状態が続く。「維持」の対象はシステムや構造物だけではない。その担い手が健全であることも重要だ。
●つむじ風 12月18日
 県などの主催による「希望郷いわて流域治水シンポジウム2025」が14日、岩泉町で開かれた。県立岩泉高等学校の生徒らも交えながら、水害に備えたハード・ソフト対策の事例発表やパネルディスカッションなどが行われた▼岩泉高校2年の生徒2人は、地元小学生を対象とした防災教室の取り組み事例を発表。災害が発生する危険性のある場所がないかなどを、小学生と一緒にジオラママップを活用して考えたことを発表した。生徒たちは「小学生にも的確に伝えるために情報を収集した。私たち自身の理解も深まった」「防災に対する意識を高めるためにも、ジオラマ防災教室を続けたい」と語っていた▼パネルディスカッションでは、地域の防災士から、「流域治水の取り組みを『自分事』にするため、柔らかいネーミングを募集するなど、工夫があればおもしろいのでは」との声も上がった▼高校生らもシンポジウムに参加したことで、流域治水の一つの「深化」が図られていると感じた。水害への備えにさまざまな視点を生かし、流域治水の「真価」を発揮したい。
●つむじ風 12月17日
 本格的な除雪作業を前に、県内各地で除雪機械出動式が開かれた。岩手河川国道事務所水沢国道維持出張所管内の除雪安全祈願祭と除雪機械出動式では、出動式後に前沢防災除雪ステーション近くにある前沢北こども園の園児らを招き、除雪学習会を開いた▼園児らに除雪機械を説明後、園児らの号令で除雪機械のエンジンを始動させた。凍結抑止剤散布の様子や散布車に薬剤を投入する様子を間近で見学。キラキラして見える凍結抑止剤散布に興味津々な園児らの様子が印象に残っている▼園児を撮影しようと除雪機械の運転席に近づくと、手作りの作品が目に入った。「おまもり」「おしごとがんばってください」と描かれたお守りだった。以前、園児からもらったお守りを目に付く場所に飾り続けているという。「効果は抜群です」のオペレーターの答えに周囲は笑顔に包まれた▼西高東低の冬型気圧配置となり、県内でも冬将軍の到来を感じる季節となった。慣れた作業に油断せず安全第一で、健康管理にも気を付けながら除雪作業に当たり、来春を笑顔で迎えたい。
●つむじ風 12月16日
 12日に青森県東方沖で起きた地震は、8日の地震の活動域で発生し、本県など太平洋沿岸域に津波注意報が発表された。年末の忙しい時期。スケジュールの変更に悩まされた人も多かったのではないか▼12日の地震はマグニチュード6・9。本県などで最大震度4の揺れを観測した。8日の地震で北海道・三陸沖後発地震注意情報を発表していた気象庁は、「あくまでマグニチュード8クラス以上の大規模地震を対象に注意を呼び掛けるもの。今回の地震は、対象の地震ではない」としている▼12日は宮古市内にいたが、凍てつく寒さに加え、かなりの強風。沿岸部の道に雪は見えなかったが、盛岡から向かう途中の区界峠は凍結路面で車の運転に苦慮した。仮に本格的な徒歩での避難や、緊急輸送などで内陸―沿岸間の交通が増えるようなことになっていれば、厳しい状況だったに違いない▼青森県東方沖での地震では、発生から津波の到達予想時刻までの時間も短く感じる。工事現場からの避難経路や、避難時の寒さ対策も含め、日頃から備えを万全にしておきたい。
●つむじ風 12月13日
 健康診断の結果が戻ってきた。以前から血圧が高く、継続的に治療を受けているのだが、その他の数値もみな少しずつ基準超え。今回そこに、尿酸値が新たに加わった。痛風の怖さを指摘され、少しビビったものの、未だに大好きなホルモンの煮込みを大盛で食べている▼久々に会った人には開口一番、「太ったな」と言われる。典型的なメタボの状態。自覚症状はないが、複数のリスクが相互に影響することで、動脈硬化を急速に進行させ、心筋梗塞や脳卒中など命に直結する病気の発症リスクが高まるという▼ところで日本人の平均寿命は、男性81・05歳、女性87・09歳(2022年時点)。一方で健康寿命は、男性が72・57歳、女性が75・45歳となっている。男性の約9年間、女性の約12年間は日常生活に何らかの制約がかかる「不健康な状態」にある▼「健康で長生き」が理想なのは言うまでもない。厚労省を中心に「スマート・ライフ・プロジェクト」が進められており、労働者の高齢化が進む建設業にとっても重要な取り組みの一つになるのではないか。
●つむじ風 12月12日
 県生コンクリート工業組合によると、工組員企業の25年度生コンクリート出荷予測は約45万立方㍍と過去最少の水準となる見通し。県アスファルト合材協会は25年度の合材製造数量を、前年度をわずかに上回る約53万㌧と予測している。これらの動きから判断すると、砕石や砂利はそれ以上に厳しい状況であることが容易に判断できる▼25年度の補正予算のうち国交省関係の公共事業費は、国費ベースで2・1兆円となる見込み。国の経済対策に対応した県の補正予算も近く発表されるだろう。いずれも第1次国土強靱化実施中期計画の初年度分が大きなウエートを占めることが予測される▼11月9日に本県三陸沖を震源とする地震、今月8日には青森県東方沖地震と、津波を伴う地震が連続して発生した。既存インフラの老朽化対策や防災機能強化への重点投資と併せて、地域建設業が企業体力を適正に維持する施策が不可欠だ。同時に、県内における主要な資材の安定供給体制を維持することも必要。業界全体が疲弊している中、「困ったら県外から」は通用しない。
●つむじ風 12月11日
 気象庁による「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の発表が、新聞各紙やテレビなど、多くのメディアで取り上げられていた。東日本大震災の教訓を踏まえながら、今回の注意情報の発表を一つの機会と捉えて、改めて身の回りの防災を見つめていきたい▼東日本大震災の後、三陸沿岸地域では、さまざまな建設工事が同時並行的に進められてきた。当時、復旧・復興工事の現場安全パトロールでは、はじめに現場からの避難経路や避難場所などの説明を受けた。海に近い現場が多かったこともあり、参加者で高台の場所などを確認し合ったことを思い出す▼10日に久慈地域で行われた安全パトロールの現場においても、担当者から「安全教育の一環として、津波避難経路などを指導している」との話を伺った。現場で働く人の安全・安心を確保していく上で、震災の大切な教訓が生かされている▼今後も建設現場には、新規入職者や若い世代が入ってくる。建設技術を日々伝えるのと同じように、現場の防災対策などを相互に確認しておくことも大切だと感じている。
●つむじ風 12月10日
 国道4号北上拡幅(延長12・2㌔)のうち、区間南側の北上市と金ケ崎町境から洞泉寺前交差点の延長2・5㌔が6日午前5時に開通した。1982年から4車線化事業に着手し、43年をかけて事業完了となった▼東北地方整備局岩手河川国道事務所は、開通前の2日に現地説明会を開いた。担当者から交通混雑の緩和や冬期交通の円滑化、沿線自治体の産業振興支援―などの整備効果をパネルで紹介。その中で、北上拡幅の変遷として起点部北側の上空画像には驚いた▼1996年と2023年の比較で、緑が多く残る風景が約30年で一転。工業団地や企業、住宅が整備された様子が一目瞭然。それもそのはず。北上市の企業誘致数は、80年の52社に対し、00年に159社、23年には244社に。供用区間が延びるとともに増加している様子がうかがえる▼実際に開通区間を走行すると、安心感と開放感が向上したと感じた。北上拡幅前後では、金ケ崎拡幅や北上花巻道路などで整備が進んでいる。早期に供用を開始し、より質の高い道路空間が生まれることを期待したい。
●つむじ風 12月9日
 4日に取材で盛岡から大船渡に向かったが、今シーズン初めて雪道の運転を体験。遠野・住田の境にある国道107号の荷沢峠は、雪が7、8㌢ほど積もり、圧雪路面を車が列になり時速30㌔で下っていた▼かなり神経を使う運転となったが、大船渡に着くと雪は降っていても、道路には雪が無い状態。峠の雪道の話をすると、大船渡の地元の人に驚かれた。冬季は、内陸部と沿岸部で景色が一変することも多い。特に沿岸から内陸側に向かう際は、慎重な運転が必要だろう▼この時期、各地で行われる工事現場の安全パトロールでは、積雪・凍結による墜落・転落、転倒災害の防止対策とともに、車両のスリップ事故などへの注意が呼び掛けられている。作業者間で声を掛け合い、対策の徹底を図りたい▼「いわて年末年始無災害運動」でも、運転時の注意事項として、急ハンドル・急ブレーキの回避や、十分な車間距離の確保、橋上・トンネルの出入口等での減速などを挙げている。年末年始の慌しさの中でも、移動時間に余裕を持ち安全運転を心掛けていきたい。
●つむじ風 12月8日
 週間天気予報に雪のマークが続き、除雪出動式や除雪功労者表彰の取材が増えると、冬の訪れを実感する。今年も長い長い雪国の冬が始まる▼除雪機械の大きさには出動式の取材のたび新鮮な驚きがあり、実際に雪を跳ね上げる姿を見ると、能率の良さと迫力に圧倒される。冬季においても、安全な道路を維持し続ける関係者の皆さんに対しては、ただただ頭の下がる思いだ▼除雪においても、担い手の確保・技術の継承が重要な課題として位置付けられる。次世代の方に話を聞くと、操縦技術の奥深さとともによく語られるのが、地域住民への思いだ。「除雪を通して地元の役に立ちたい」「皆さんの生活を支えられれば」といった言葉には、先達から受け継がれた「地域の守り手」としての誇りが、確かに息づいている▼除雪により交通環境を整備してもらっていても、冬場の運転には細心の注意が必要だ。スリップを起こして事故になった夢にうなされ、飛び起きるたび、安全運転への思いを新たにする。今年の冬も、夢が正夢にならず、無事に春を迎えられますように……。
●つむじ風 12月5日
 賛否両論あれど、今年の新語・流行語大賞は「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」だとか。てっきり「古古古米」か「緊急銃猟/クマ被害」だと思っていた。主催者に何らかの意図があるのか、実は世の中が「働き方改革疲れ」しているのか▼建設業に24年4月から時間外労働の罰則付き上限規制が適用され、公共工事では発注者指定型の週休2日制が定着しつつある。「建設業も他産業と同様に休みが取れる産業に」という理想に着々と近付いているように見える▼一方で、それが建設業の本質を見失わせていないかと懸念する声もある。青天井で働くことが良いことだとは一つも思わないが、現在の働き方改革が本当に現場のためになっているか、立ち止まり見直すことも必要だろう▼さて俺も流行に乗って「今年は年末まで、働いて働いて…」と言ったところ、同僚から「うちらは働かされて働かされて…じゃないの?」とキビしい一言。なるほど、問題はそこか。大切なのは「働かされる」のではなく「働く」こと。そのために何ができるか。
●つむじ風 12月4日
 県土整備部と県農林水産部では、初の合同企画として、パンフレット「スターが育つ!土台はいわての農林水産業と社会基盤!」を作成。本県から多数のスター選手らが羽ばたいていることを受け、「岩手の人づくり」の土台である農林水産業や社会基盤関連の取り組みなどを紹介している▼早速ページをめくると、県庁の若手職員の集合写真が目次と共に掲載されている。県土整備部県土整備企画室では、「若手職員の皆さんも岩手の将来を担う県庁のスター」と話していた。さらには「積極的に職員の姿を見せていくことで、職員の確保にもつながるのでは。『岩手でこんなに面白い取り組みをしているんだ』と思ってもらえれば」と期待も込めていた▼県庁では5日までパネル展を開催。今後、各地区合同庁舎のロビーなどを活用し、同様のパネル展の開催を予定しているようだ▼パンフレットには、「いわての美味しいお米」「いわての住まい」を作る取り組みなどを掲載している。発注者・受注者を問わず、「インフラを担うスター」が広い岩手を支えている。
●つむじ風 12月3日
 県南広域振興局土木部北上土木センターが発行している「国道107号おおいし情報」。第1号は、現地で法面変状を確認した21年5月1日から20日ほど経過した同月20日に発行。これまでの経緯や国の専門家による調査状況などを伝えている▼今月1日に最新号となる15号を発行。11月30日に開催した開通式典の様子を、内記和彦西和賀町長の開通に対する期待の声とともに発信している。これまで発行した各号を開いてみると、発生から開通までの4年7カ月を振り返ることができる▼個人的に印象深いのは全面通行止めとなっていた道路の惨状を目の当たりにしたことや仮橋を歩いたこと、現場見学会での発破音のごう音と爆風、夏・冬版の仮橋カード、暗いトンネル内に照明がついた瞬間の明るさなど。開通式典のトンネル内での太鼓の迫力ある演奏にも驚いた▼15号には、今月8日から開通記念パネル展を開催するとの告知も。大石トンネル開通に至るまでの復旧の道のりを写真や図解で紹介するとともに、「難工事の克服」など見どころも満載という。ぜひ足を運びたい。
●つむじ風 12月2日
 陸前高田市内の東日本大震災津波伝承館は、22日まで企画展示「災害と火―火災から身を守るために備えること―」を、道の駅側の地域情報スペースで開催している▼過去の大規模火災の事例として、1961年5月に発生した三陸フェーン大火や、2011年3月の東日本大震災津波による火災、大船渡市での2月の林野火災を紹介。火災原因では「たばこ」、「たき火」が多いことなど、火災の種類、件数、起きやすい時期・時間帯をデータで見せている▼火災に強い建築・まちづくりのほか、「定期的にコンセント周りを掃除しよう」「家の中のインテリアに耐火素材を選ぼう」など、家庭・個人でできる備えも提示。口に布をあて、身を低くする適切な避難姿勢や、大規模な火災に対応した避難場所の確認なども促す▼空気が乾燥し、火気・暖房を使う機会が増え、火災のリスクが高まる時期。大船渡市で起きた林野火災も記憶に新しい中、大分市佐賀関での大規模火災は対岸の火事ではないだろう。工事現場も含め、防火対策を再度確認しておきたい。
●つむじ風 12月1日
 国道46号盛岡西バイパスが、11月29日に待望の全線4車線供用した。新たに4車線となったのは、北端の県立美術館入口交差点から北口交差点間の延長3・6㌔。北口交差点付近にはイオンモール盛岡などの大型ショッピングセンターが集積。特に混雑が激しかっただけに、喜びもひとしお▼盛南開発と一体的に進められてきた同バイパス整備。供用区間の延伸とともに沿線の都市化が進展し、沿線地域の人口は当初に比べ2・1倍、事業所数は3・5倍に拡大した。良好な住環境が整備された地域として、地価も上昇傾向にある▼それとともに交通量も増加。並行する国道4号からの交通の転換も進み、同バイパスでは慢性的に交通渋滞が発生。特にボトルネックの2車線区間の混雑度は、県内の直轄国道では最大の1・99となっていた▼岩手医大の矢巾町移転などにより、盛岡広域南部の国道4号の渋滞も著しくなっている。盛岡西バイパスと直結する盛岡南道路が整備されれば、南北に並行する大動脈が二つになり、社会・経済の発展に大きな効果をもたらすはずだ。
●つむじ風 11月28日
 父親が建設業で働いていた。建築の現場監督。「父親が関わった建築物を見るのが誇らしかった」と言えば良い話で終われるが、実は子ども心に事故が心配だった。当時はいまと比べものにならないほど労働災害が多かった時期。父がいない日に事故のニュースが出ると「お父さんじゃないよね」。50年以上経ったいまでも、よく覚えている▼12月1日から来年1月31日まで行われる「いわて年末年始無災害運動」。この運動は、繁忙期である年末年始は積雪・凍結に起因する冬季特有災害が多発する時期でもあることから、職場の安全確保の重要性に対する意識を深め、労働災害の発生リスクを的確に把握して対策を講じることを目的に毎年実施されている▼年末年始無災害運動のスローガンの中に「あなたの安全家族の願い」という一文がある。職場の安全は、企業とそこで働く人のためだけではない。それぞれに家族がいて、職場の安全は家族にとっての安心と幸福でもある。年末年始もご安全に。あ、当時お世話になった皆さん。おかげさまで父はいまも元気です。
●つむじ風 11月27日
 本格的な冬が近づく中、ニュースで、今シーズンの気温や雪の量の予想が話題になっていた。この時期になると、県内の建設会社で除雪作業に携わっていた青年に話を聞いたことを思い出す。その青年は「まだ助手の役割をしていて、今は除雪をする道を勉強している段階。先輩オペレーターの除雪技術はすごい」といったことを話していた▼広大な県土を誇る岩手では、道路が県民らの生活や社会経済を支えている。本県の骨格をなす代表的なインフラとも言えるだろう。地元建設業は、年間を通して、地域を結ぶ道路を支えている。冬場には、地元の路線バスなどが通る前に、除雪を実施している。県民の一人として、除雪オペレーターの皆さんには、感謝の思いしかない▼日頃から県土を見守る多くの人の存在があって初めて、インフラが適切に機能を発揮するものだろう。インフラの機能の維持は、県民生活の安全・安心に直結する▼除雪対応などにおいては地元に根差す会社、人の技術力は不可欠。県土を将来に引き継ぐためにも、地域を支える人を大切にしたい。
●つむじ風 11月26日
 県建築士会花巻支部(佐々木繁樹支部長)と花巻市、県南広域振興局土木部花巻土木センター(長沼輝伸所長)が開いている「世代をつなぐ防災・住まいの耐震授業」。08年度から始まり、17年間で延べ37校で実施した▼このほど、花巻市立笹間第一小学校6年生21人を対象に開催。住宅に使用される梁材の持ち上げや大小の住宅模型を使い、筋交いの有無で揺れの違いを体験し、耐震補強の重要性を学んだ。授業の最後には、起震車(防災そばっち号)で全国各地の震災クラスの揺れも体感▼児童らは11~12歳で、東日本大震災の揺れを経験していない世代。起震車で東日本大震災の揺れを疑似体験すると、座っているイスが暴れ、机にしがみつくことしかできない児童らの様子を目の当たりにすると、社内で経験した当時の記憶が蘇ってきた▼児童からは「体験したことを両親に伝えたい」「耐震補強や耐震診断の大切さを学んだ」などの感想が聞かれた。地震はいつ起きてもおかしくない、人的被害のほとんどが建物の倒壊…。この事実は伝えていかなければならない。
●つむじ風 11月25日
 建設業ふれあい事業の取材に伺うと、ありがたいことに、筆者も乗車体験をさせていただけることがある。バックホウを操作した際、見ていた以上に難しかったが、大きな機械を自在に操る事には、他のものに代えがたい喜びや楽しさがある。改めて、業界への敬意と興味が深まった出来事だった▼子どもたちに感想を聞くと、「面白かった」「楽しかった。またやりたい」とにっこり。順番が一巡した後、「もう一回」と手が挙がることも多い。真剣なまなざしや、浮かぶ笑顔を見るたびに、自分と同じことを感じてもらえたのでは、と思う▼地域を守り、日々の暮らしを支える「地域の担い手」を、未来の担い手である子どもたちに知ってもらうことが重要なことだと思っている。体験の記憶が彼らにとって楽しく、実り多く、そして職業選択の一助となることを願ってやまない▼筆者自身、興味が高じて文章を書き続けた結果、本稿執筆に至っている。子どもたちが自分の興味を突き詰めた先で、また会えることを期待しながら、今後も取材活動に励んでいきたい。
●つむじ風 11月21日
 一日中コーヒーを飲んでいる。以前はコーヒー豆を輸入食品の店で買っていたが、驚くほど高くなった。勢いスーパーで安売りの時に買いだめ。味の違いが実はよく分からない。安売りコーヒーが美味いのか、俺が味音痴なのか▼全国建設業協会は先ごろ、25年度補正予算と26年度当初予算での公共事業予算確保を求める緊急要望を行った。その際、当初予算と国土強靱化予算に資材価格などの上昇分を反映することが必要であると主張したようだ▼国土交通省が8月に公表した26年度予算の概算要求。基本方針の中では、国土強靱化の推進に当たり「近年の資材価格や人件費の高騰の影響等を適切に反映し、今後の災害の発生状況や事業の進捗状況、経済情勢等を踏まえ、機動的・弾力的に対応する」との方針を示している▼国土強靱化を含めた社会資本整備は危機管理投資の要。予算の増額にせよ価格転嫁を容易にする制度設計にせよ、コストプッシュ型インフレに対応した施策が重要となる。俺の味音痴は構わないが、国民が社会資本に対する味音痴になっては困る。
●つむじ風 11月20日
 県では、県内各地域の児童・生徒らを対象に、防災学習や出前講座などを実施している。取材時に、子どもたちから何気ない質問が挙がり、意外な視点に驚かされることも多い▼例えば、砂防関連の出前講座では、児童から「砂防堰堤で津波を防ぐことはできるのか」との質問が挙がった。県の担当職員は「砂防堰堤は、山の奥に造っている施設。海の近くには、津波からまちを守るために、防潮堤という施設などを造っている」と答えていた▼砂防堰堤の造り方や、リサイクル材の使用の有無などに興味を示す児童も―。県側も工夫を凝らし、「皆さんが食べているケーキをイメージしてほしい。ケーキを作る時には、枠の中に材料を流し込んでいる。砂防堰堤を造る時にも、土やセメントなどを枠に流し込み、固めることで出来上がる」と伝えていた▼子どもたちの純粋な目は、「インフラとは何か」「なぜインフラが地域に必要なのか」などを真っ直ぐに捉えている。職員と子どもたちのやり取りの一場面。担い手の確保などに結び付くようなヒントはないだろうか。
●つむじ風 11月19日
 全国各地で人がクマに襲われる被害が多発している。クマの出没が頻発している状況を受け、東北地方整備局は管内の工事現場等で実施するクマ対策の参考とすべく「工事現場等におけるクマ対策の事例集」を作成し、公表した▼基本的なクマ対策としてクマ出没情報の収集や熊よけグッズの携行、複数人行動の徹底、食料品の放置はしないなどが挙げられ、同局管内の工事現場等ではすでに取り組んでいるという。さらなる対策として、大音量スピーカーの現場存置、イノシシの尿・唐辛子等の匂いによる忌避剤の使用、監視カメラの設置による警戒など工夫を図っている▼このほか、熊よけアプリや赤外線センサーカメラ搭載のドローンを活用、電気柵により物理的に寄せ付けない事例も。クマが潜む可能性のある草や藪の刈り払いや、クマの餌となる柿の実・栗の落実の除去清掃なども紹介している▼現場での見学会や安全パトロールの際にもクマの話題が多く出ている。事例集を参考にクマ対策を共有するとともに、各現場でさらなる取り組みがあれば共有したい。
●つむじ風 11月18日
 三陸沿岸道路で田野畑村に新たに誕生する、フルインターチェンジ(IC)の田野畑思惟ICが、12月6日に開通する。道の駅「たのはた」に隣接するICで、利便性の向上に期待が寄せられる▼同ICは、田野畑南ICと田野畑中央ICの間に設置。同村菅窪にある既存の田野畑チェーンベースと、道の駅沿いを走る村道十文字線を連結させ、新ICにする。以前からチェーンベースと村道は緊急連絡路でつながっている状態だったが、今回の開通により常時通れることになる▼開通日は、村主催で完成式を開催後、午後3時から一般車両に開放される予定。チェーンベースを経由しての出入りで、車長12㍍を超える車両は利用できないため、田野畑南ICまたは田野畑中央ICを利用することになる▼同村にとっては待望の開通。佐々木靖村長は、「村を訪れる観光客のゲートウエーとして重要なIC」とし、道の駅の利用促進、村内と三陸沿岸道路とのアクセス性の向上に期待を込める。産業・観光の振興により、さらなる地域の活性化につながればと思う。
●つむじ風 11月17日
 県と盛岡市の初の共同整備となった「きたぎんボールパーク(いわて盛岡ボールパーク)」。今年で2年目を迎えた。プロ野球1軍の公式戦や高校野球のほか、さまざまなイベントも開催。屋内練習場も併設され、今や本県スポーツ拠点の一つとなっている▼共同整備の第2弾として、動物愛護管理センターの整備を計画。人と動物が共生する社会の実現に向けて、動物愛護思想の普及啓発の拠点施設として整備されるもので、設計プロポーザルにより三衡設計舎・槇総合計画事務所設計共同企業体を最優秀者に特定。今後、27年度の着工に向けて、計画の具体化が図られる▼ところで県と盛岡市は、内丸地区にある現庁舎の老朽化が進み、再整備に向けた検討が進められている。現時点ではともに「内丸地区」での再整備を前提に、計画の具体化を図っている段階だ▼庁舎を再整備する上で、課題の一つに挙げられるのが駐車場。限られたエリアでの敷地の確保は容易ではない。ともに内丸地区での再整備となるならば、それも共同整備とはいかないものか。
●つむじ風 11月14日
 帝国データバンクが先ごろ公表した全国の「増収増益企業」の分析調査によると、24年度の増収増益企業は14万社余り。分析対象の約44万社のうち32・2%に当たるとのこと▼業種別で見ると建設業が約5万8000社で最も多い。同社によると「公共事業が底堅く、半導体工場の新設や都市部の再開発事業のほか、省エネ投資、データセンターの新設など、民間の設備投資が需要を支えた」とある。岩手にいると、どうもピンとこない▼都道府県別で見た増収増益企業の出現率トップは石川県。やはりというか、この中の半数近くが建設業。同社では「幅広い分野で災害復旧関連の特需があったことが要因の一つとして考えられる」とする。これは岩手にいても実感できる。そして、その後に何が待っているのかも予想が付く▼ちなみに本県の増収増益企業の出現率は26・6%。本県を下回っているのは4県で、うち3県は東北管内。本県では企業倒産も増えてきた。人材確保やIT化、価格転嫁などの必要性が説かれるが、何よりも需要を創出する対策が必要になるだろう。
●つむじ風 11月13日
 2日間にわたり、社外の現場リーダー研修に参加した。製造業を中心とした25人が研修に臨み、5チームに分かれて、課題解決に向けた検討などに取り組んだ▼冒頭、講師は「現場とは、顧客に対する価値を生み出す場所。製造業のみならず、建設業、物流業、小売業なども同様だ」と切り出した▼チームでは最初に「作業と仕事の違い」を話し合った。機械類の製作に携わっているという一人は「作業は細分化された工程、仕事は社会への貢献」と語った。思わずハッとさせられると同時に、建設業が担う公共事業の重要性にも結び付くと実感した▼建設業では、技術者や技能者らが専門的な技術や経験などを駆使し、チームとなって現場を造り上げている。県内でもさまざまな現場が出来上がっていくことにより、住民らの生活や社会経済などを支えている。まさに、なくてはならない大きな仕事だと改めて強く思う▼実のところ、筆者は上司に報告書を提出する必要があるのだが、まだ手を付けていない。まずはこの欄をもって、一つの報告としたいところだ。
●つむじ風 11月12日
 県建設業協会青年部連絡協議会(木下伸一会長)の25年度交流会が先日、遠野市内で開かれた。交流会前の交流事業では、ドローンサッカーやeスポーツが行われ、青年部会員の楽しそうな姿が印象に残っている▼ドローンサッカーでは、主管した県建設業協会遠野支部青年部会員が審判やサポート役を務め、先日発足した日本ドローンサッカー連盟岩手支部の馬場貴之支部長がMCを務め会場を盛り上げた。3人が1チームとなり1分間の練習後、3分間の試合で得点を競い合った▼会場の一角には、仮想現実(VR)を体験できるコーナーも。実際に体験してみると、イスに座ったままにも関わらず、音と映像による重力の変化は不思議な感覚だった。体験後には、すぐに立ち上がることができず、手には冷たい汗が流れていた▼ドローンやVRは、建設業界でも身近な存在となってきた。実際に現場に足を運び、建設業の魅力を伝えることも大切だが、ドローンやVRなどを組み合わせることで、建設業そのものやその魅力を伝えることができるのではないだろうか。
●つむじ風 11月11日
 9日夕方に三陸沖で発生した地震。7月30日にカムチャツカ半島付近で起きた巨大地震以来、県内では津波注意報が発表され、沿岸部では津波が観測された▼地震の規模は、マグニチュード6・9。県内では盛岡市、矢巾町で最大震度4、津波も最大波として大船渡市と久慈市で20㌢、釜石市と宮古市で10㌢が観測された。地震発生時は盛岡にいたが、強めの長い横揺れを感じた。10日も規模は小さいが横揺れの地震が続いている。気象庁では、地震が発生した地域で過去に続発事例があることから、1週間程度、最大震度4程度の地震に注意するよう呼び掛けている▼三陸沖の地震で津波注意報が発表されたのは、2015年2月以来。今回は対象規模とならなかったが、後続の地震でマグニチュード7・0以上の地震が発生した場合は、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されることになるとのこと▼避難ルートや避難場所はもちろん、今後は冬本番を迎えることから寒さ対策、備蓄品などのチェックも重要だろう。改めて災害時の備えを確認しておきたい。
●つむじ風 11月8日
 「過疎地ではあるが、ふるさとを守り、国内で消費する食料を生産し、納税している人たちがいる。地域の若者を見捨てず、岩手のふるさと、日本のふるさとを守るための地域づくり、道づくりを」▼10月29日に花巻市で開かれた「いわての地域づくり・道づくりを考える大会」で、㈲カネシメ水産代表取締役の金子太一さんが意見発表した。普代村を拠点に、魚の水産加工事業を展開。鮭のみを使用した魚醤「―KEISYO―」を開発するなど、数々の賞を受賞している▼「三陸沿岸道路が開通し、普代村にも観光客が訪れるようになった。社業も道路の恩恵を大きく受けている」とメリットを語る金子さん。一方で、「人口減少が進み、以前は村内で購買していたものが村外に流れるようになった」とデメリットも感じている▼今後、急激な人口減少を迎える中、病院や学校などの公的施設も少なくなっていく。地域と地域を結ぶ強靱な道路が必要となるのは言うまでもないが、その結びつきをどのように地域活性化につなげていくのか。待ったなしの状況にある。
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